この記事を読めば志摩観光ホテルの総料理長樋口宏江さんがどんな道を歩んできたのか、そしてなぜあんなに国内外から注目されているのかがわかると思います。
正直に言うと、私も最初は「G7サミットで料理を作った人」というイメージしかなかったんですよね。
でも調べていくうちに、けっこう人間味のあるエピソードがたくさん出てきて勝手に親近感を持ってしまいました。
伊勢志摩の食を代表する料理人の人生、一緒に覗いてみませんか。
樋口宏江さんのプロフィール
まず基本情報を表にまとめておきます。年表を見ているだけでも、着実にキャリアを重ねてきた人なんだなというのが伝わってきますね。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 樋口宏江(ひぐちひろえ) |
| 生年 | 1971年、三重県四日市市生まれ |
| 年齢 | 今年で55歳 |
| 学歴 | 大阪あべの辻フランス料理専門カレッジ卒業 |
| 入社 | 1991年、志摩観光ホテル入社 |
| 主な経歴 | ホテル志摩スペイン村「アルカサル」シェフ(23歳)、「ラ・メール」シェフ(37歳) |
| 現職 | 2014年、志摩観光ホテル第7代総料理長に就任。都ホテルズ&リゾーツグループ初の女性総料理長 |
| 代表的な実績 | G7伊勢志摩サミット2016ワーキングディナー担当、料理マスターズブロンズ賞(2017年、女性初・三重県初)、シルバー賞(2024年)、フランス農事功労章シュヴァリエ受章(2023年) |
| 著書 | 「海の幸フランス料理」の伝統と未来(2025年刊行) |
小学生の頃からすでに料理人志望だった
これ、けっこう驚いたポイントなんですけど樋口さんって小学校の頃からもう料理の道に進みたいと思っていたらしいんです。
子供の頃に見ていた辻調理師専門学校監修のテレビ番組がきっかけだったそうで、フランス料理そのものを食べたことがないまま見た目の華やかさに惹かれていったみたいですね。
活発な女の子で、実はお料理少女ではなかった
意外だったのが樋口さん自身は「近所でも男の子と遊ぶことが多かった」と語っていること。
外で落とし穴を作ったり、よそのお家の塀に落書きして怒られたりしていたらしくて、いわゆる料理好きなおしとやかな子というイメージとはちょっと違うんですよね。
お母様が専業主婦で手作りのおやつやお味噌を作る家庭だったので、その手伝いから少しずつ料理への興味が芽生えていったようです。
私が思うにはこの「外で遊ぶ活発さ」と「じっくり手仕事に向き合う繊細さ」の両方を持っているのが、今の料理にも表れている気がします。あくまで私の見立てですけど。

入社直後の戸惑いと悔し涙の日々
樋口さんは1991年に志摩観光ホテルへ入社し、その後23歳という若さでホテル志摩スペイン村のレストラン「アルカサル」のシェフに抜擢されました。
すごいスピード感ですよね。
ただ、当時の樋口さんは「こんなにさせてもらっていいのかな」と戸惑っていたそうです。
毎日叱られて泣いていたという告白
インタビューの中で樋口さんは「毎日、叱られて泣いてました」とはっきり語っています。
理由を聞かれると「できなくて、悔しくて」と答えていて、なんか、この一言がすごく人間らしいなと感じました。
完璧な成功譜だけじゃなくこういう泥臭い時期があったからこそ今の技術があるんだろうなと思います。
ただ樋口さん自身は「先輩が求めているものができていたかどうかは、なかなか」と控えめに振り返っていて、当時から努力を怠らない人だったことが伝わってきますね。
女性総料理長という肩書きの重み
2014年、樋口さんは志摩観光ホテルの総料理長に就任し、これが都ホテルズ&リゾーツグループで唯一の女性総料理長という立場になりました。
専門学校時代は女性がかなり少なかったらしく、就職先も「女性に開かれている門が少ない」と感じていたそうです。
分け隔てない職場に恵まれたという実感
とはいえ樋口さん自身は「女性として働く上ではとても恵まれた場所でした」と語っていて、性別を理由に嫌な思いをしたことはあまりなかったようです。
これって、正直業界全体で見るとかなり幸運なケースなんじゃないかなと思います。
細かく検証していないので断定はできませんが当時の料理業界で女性の先輩がすでにいた環境というのは、意外と珍しかったのではという気もしますね。
G7サミットの舞台裏、実はギリギリだった
2016年のG7伊勢志摩サミットで樋口さんはワーキングディナーを担当し各国首脳をもてなしました。
有名な実績なんですけど、直これってそんなにドラマチックに語られがちだけど、裏側の準備期間の話のほうが個人的にはグッと来ました。
シェフが決まったのはまさかの直前だった
樋口さんによると会場が志摩観光ホテルに決まったあとも「誰かシェフとして外から来るんだろう」と思っていた関係者が多かったそうです。
実際にシェフとして任されると決まったのは開催の直前で、そこから急いで食材の手配を進めなくてはいけなかったといいます。
しかも首脳だけでなく随行員の食事まで用意する必要があったので、限られた時間の中で相当なプレッシャーがあったはずです。
ちなみに、参加国の中に海老や貝類のアレルギーを持つ方がいなかったのは「幸いだった」と樋口さん本人が語っています。
もし一人でもアレルギーの方がいたら、名物の伊勢海老料理はまったく出せなかったかもしれないんですよね。ちょっとゾッとする話です。
醤油は使わないという意外なこだわり
伊勢志摩の食材を活かしたフレンチというと、和の食材をふんだんに使っているイメージがあると思うんですけど、樋口さんには意外なこだわりがあるんです。
実は今でも醤油を使わないと明言しています。
鰹節は出汁ではなく香りづけとして使う
樋口さんは鰹節を和食のように一番出汁として使うのではなく、鶏の出汁やトマトのコンソメといった洋食のベースに香りのエッセンスとして纏わせる使い方をしているそうです。
一方で醤油に関しては「日本人ならひと口食べて美味しいと思う味」だからこそ、フランス料理に取り入れることにまだ迷いがあると語っています。
フランスの現地シェフたちが柚や昆布、醤油まで積極的に使っているのを知って驚いたというエピソードもあり、伝統と革新のバランスをどこまで踏み込むか、常に慎重に見極めているんだろうなと感じました。
鮑ステーキと伊勢海老クリームスープの物語
志摩観光ホテルの名物といえば「鮑ステーキ」と「伊勢海老クリームスープ」です。
この2品、実は先代の第5代総料理長・故高橋忠之シェフが生み出した「海の幸フランス料理」の伝統を受け継いだメニューなんですよね。
昔からのお客様が楽しみにしている定番の味
樋口さんは「昔からのお客様も、これを召しあがるのを楽しみにいらっしゃる方が多い」と語っていて、伝統の味を守り続けることの大切さを口にしています。
実際インタビューの中でも、新しい料理に挑戦することと同じ料理をずっと作り続けることは「両輪」だと表現していて、いつ来ても同じ味を提供することのほうがむしろ難しいと語っているのが印象的でした。
簡単そうに見えて実はすごく難しいことなんだろうなと素人ながらに納得してしまいます。
食材との出会いを大切にする現場主義
樋口さんは生産者のもとへ直接足を運ぶことをとても大事にしているようです。
柑橘の摘果された未熟な実の香りを試したり、鮑が食べている海藻の違いによって味が変わることを漁師さんから直接教わったりと現場でしか得られない情報を積極的に集めています。
若手を育てるための率先垂範スタイル
スタッフ全員が同じモチベーションを持つのは難しいと認めつつも、樋口さんは自分自身が楽しそうに動くことで、興味を持ったスタッフが自然とついてくるという考え方を大切にしているそうです。
押し付けるのではな、自分の熱量を見せて伝えていくスタイル。なんか、これって料理業界だけじゃなく、いろんな仕事に通じる話だなと思いました。
受賞歴が示す実力の証明
樋口さんの評価は年を追うごとに積み重なっています。
2017年には料理マスターズのブロンズ賞を女性初・三重県初で受賞し、2024年にはさらに上位のシルバー賞を受賞、三重県唯一の受賞シェフという立場を保っています。
同じ2024年にはゴ・エ・ミヨのトランスミッション賞や文化庁長官表彰も受けていて、まさに評価が集中した年だったといえるでしょう。
2023年にはフランス農事功労章シュヴァリエも受章していて、国内外どちらからも高い評価を得ているのがわかりますね。

2025年、初の著書に込めた想い
そして2025年、樋口さんはついに初めての著書を刊行しました。「自然への想いを繋ぐ皿『海の幸フランス料理』の伝統と未来」というタイトルで、柴田書店から発売されています。

79品の料理に凝縮された哲学
この本には伊勢海老と鮑を軸にした探究の成果や古典を土台にした料理の進化、新しい食材の開拓といったテーマが79品の料理と写真、コラムを通して丁寧に綴られています。
目次には「海のリズムにゆだねる」「伊勢海老」「鮑」「大地の声を聴く」「伝統を未来に」という5章が並んでいて、樋口さんが食材とどう向き合ってきたかがそのまま表れているような構成ですね。
個人的には料理そのものだけでなく「なぜその料理が生まれたのか」という背景まで綴られているところに、著者としての誠実さを感じました。
まとめ
樋口宏江さんの歩みを振り返ると魅力は単に料理の腕前だけではないことが見えてきます。
- 小学生の頃から料理人になる夢を抱き、実際に叶えてしまった一途さ
- 入社直後の悔し涙を経て積み重ねた30年以上のキャリア
- 都ホテルズ&リゾーツグループ初の女性総料理長という先駆的な立場
- G7サミットという国際舞台で見せたプレッシャーとの向き合い方
- 醤油を使わないという意外な線引きに見える伝統への敬意
- 生産者との現場でのつながりを重視する姿勢
- 三重県唯一の料理マスターズシルバー賞受賞という実力の証明
- 2025年の著書に込められた自然への想い
調べてみて思ったのは樋口さんの魅力ってやっぱり「変わらない伝統」と「新しい挑戦」を同時に抱えながら走り続けている姿そのものなんだろうなということです。
まあ、あくまで私の感想ですけど。
志摩観光ホテルを訪れる機会があったら、この背景を知った上で鮑ステーキを味わってみるとまた違った感動があるかもしれませんね。

コメント