Adoがプロデュースするアイドルグループ「ファントムシータ」のことを調べていたら、思っていた以上に深みのある話で気づいたら2時間くらい経っていました。
プロデューサーとアイドルっていうとちょっとした名義貸しとか監修程度のイメージがあったんですけど、このふたつの関係はぜんぜん違う。
世界観の設計から楽曲、ライブの組み方、共演のあり方までAdoがとんでもなく深いところまで関わっているんですよ。
デビューからの経緯をたどっていくとこれはもうAdoのアーティストとしての哲学をそのまま移植したグループなんだな、という確信に近いものが生まれてくるんですよね。
ファントムシータを知るためにはまずAdoが何を作りたかったのかを理解する必要がある、そんな気がしています。
グループ名に込めたもの
「怪忌蝶」という名前の話
まず名前の話から。
「ファントムシータ(Phantom Siita)」漢字では「怪忌蝶」と表記するらしくて、これを初めて見たとき「すごい名前だな」と声が出ました。
Phantomは幽霊や幻を意味する言葉でSiitaは蝶の学名「Parantica sita」と、蝶を模倣する蛾の学名「Epicopeia hainesii」の両方から取られているそう。
蝶と蛾、つまり「本物と、本物に似せた偽物」という二面性がグループのコンセプトの根っこにあるわけです。
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| Phantom | 幽霊・幻・お化けなど、見えない存在 |
| Siita | 蝶の学名+蝶を模倣する蛾の学名 |
| 漢字表記「怪忌蝶」 | 妖しく美しい蝶のイメージ |
「どちらが本物か」という問いかけ
これって「どちらが本物か」という問い自体をコンセプトに据えている感じですよね。
ただおしゃれな名前をつけたわけじゃなく、グループの世界観と完全に繋がっている。なかなかここまで練られたグループ名ってないと思います。
コンセプトは「レトロホラー」と定義されていて恐ろしくも美しい、懐かしくも不穏な独特の世界観を持ちます。
メンバー自身も
ホラーとはお化けや怪異ではなく、人の内側に秘めている黒い感情
と語っていてAdoが音楽を通じて表現し続けてきた人間の感情の暗部というテーマがそのままグループに引き継がれているのが分かります。

グループ誕生の経緯
Xでの突然の告知から始まった
2023年10月31日、Adoが突然Xで「アイドルのプロデュースをする」「メンバーを募集する」と投稿したことで、このプロジェクトが動き出します。
翌週11月7日から「idol Audition produced by Ado」として正式に募集が始まり、最終的な応募総数は約4,000人。
その中から選ばれたメンバーが2024年6月25日に発表されて翌6月26日に1stシングル「おともだち」の配信をもってデビューという流れです。
課題曲「Tot Musica」が語ること
ちなみにオーディションの課題曲が「Tot Musica」だったのが個人的にはかなり印象深かったです。
Adoの楽曲の中でも歌いこなすのがかなり難しい部類に入るはずで歌唱力だけを測りたかったわけじゃなくて、「Adoの世界観を体現できる表現力があるか」を見たかったということですよね。
課題曲の選択ひとつでAdoがどんなアイドルを作りたいかが伝わってくる。
Adoのプロデューサーとしての本気度
専用アカウントで見えた優先順位
けっこう驚いたんですがAdoはプロデューサー専用のXアカウント(@PSP1024daifuku)を別で作っていて、
そこでの自己紹介が
ファントムシータというアイドルのプロデューサーをしています。Adoという歌い手もやっています。
なんです。
🙎「それ逆じゃない?」→と思いませんでした?私は一瞬思いました笑。でも考えてみるとこの言い方ってすごくAdoらしいというか、プロデューサーとしての立場をAdoとしての活動と対等に
場合によってはそれ以上に大切にしているスタンスが伝わってきてじんとしてしまった。
「普通のアイドルとは違う」という宣言
YouTubeの配信でも
ファントムシータは普通のアイドルとは違うアイドルなので、もし興味を持っていただけたらぜひ覚えて帰ってくれたら嬉しい
と話していたそう。
商業的なプロジェクトというより自分のアーティスト哲学を注ぎ込んだ場所、という感覚で関わっているんだろうなと思います。
共演やライブでの関係
全国ツアー全18公演に帯同
2024年7月に始まったAdoの全国ツアー「モナ・リザの横顔」。
このオープニングアクトにデビューから約1ヶ月のファントムシータが起用されるんですが。しかも全18公演すべてに。
大阪城ホール(2日間)、新潟・朱鷺メッセ、マリンメッセ福岡など全国各地を回りながら、「キミと××××したいだけ」と「おともだち」の2曲を披露し続けたそうです。
デビューして1ヶ月のアイドルグループがプロデューサーのアリーナ・ホールツアー全公演に帯同するのはかなり異例のことで、これはAdoが意図的にファントムシータの成長に場を与えたということですよね。
要するにツアーそのものをプロモーションとして機能させた。自分の大規模なステージを「育成の場」として使うプロデューサーって、なかなかいないと思います。
デビュー5ヶ月で武道館
デビューからわずか5ヶ月で東京・日本武道館での初ワンマン公演「ハイネ」が開催されました。
2024年11月1日のことです。
…うん。5ヶ月、ですよ。
全国ツアーへの帯同でファンとの繋がりを積み重ねてきたからこその実現でもあるでしょうし、Adoのサポートがあってこそという部分も正直あると思う。
でもそれ以上に、「ここまで育てたかった」「ここまで見せたかった」というAdoの熱量が形になった瞬間だったんじゃないかなと感じています。
ドームツアーにも帯同、Adoのコミットが続く
2025年11月のAdo初ドームツアー「よだか」でも、ファントムシータはオープニングアクトとして起用されています。
東京ドームと京セラドーム大阪でそれぞれ2日間ずつ計4公演すべてに出演。
デビュー直後からアリーナ・ホールと経験してきて今度はドームという段階を踏んだ展開になっている。
これ、Adoの側に「育てながら一緒に大きくなっていく」という設計があるのかもしれない。
ワールドツアーという異例の出発点
「Moth to a Flame」全15都市
デビューから半年も経たないうちに今度は初のワールドツアー「Moth to a Flame」が発表されます。
2025年1月の台湾・台北を皮切りにマニラ、シンガポール、サンノゼ、アナハイム、ダラス、ヒューストン、シカゴ、ニューヨーク、トロント、ユトレヒト、パリ、ベルリン、ロンドンとアジア・北米・ヨーロッパの全15都市を巡るというスケール感。
Ado自身も「アイドルとしてもアーティストとしても異例」とコメントしていたほどで。
タイトルに込められた意味
ちょっとリスキーに見える判断でもあると思うんですがツアータイトル「Moth to a Flame(飛んで火に入る夏の虫)」がそのリスクや熱狂を正面から受け止めたタイトルになっていて。
危険だとわかっていながらも惹き寄せられてしまう。そんなファンとファントムシータの関係性をそのままタイトルにしたそうです。格好いいんですよねこの発想が。
このワールドツアーを経てユニバーサル ミュージックからメジャーデビューも果たしています。
自分の見立てではこの流れはかなり綿密に組まれた道筋なんじゃないかという気もして。あくまで仮説だけど、Adoがプロデューサーとしてどこまで先を描いていたのか、というのは想像するだけで面白いですよね。
この問題って結局「Adoという圧倒的な存在の影響力を、グループのブランディングにどう組み込むか」という話に落ち着くんじゃないかと思っていて、というのもファントムシータが独自のアイデンティティをどう構築するかという観点から見ると…
考え始めるとキリがないやつなのでここまで!
THE FIRST TAKEでの共演
V/S THE FIRST TAKE(2026年1月1日)
2026年1月1日、「THE FIRST TAKE」の新企画「V/S THE FIRST TAKE」が公開されました。
「V/S」は対決じゃなくて、2組のアーティストによる声の共演(Vocal Session)という意味だそうで。
最初に読んだとき「対決じゃないんだ」と意外でしたが考えてみればそりゃそうで、プロデューサーとアイドルが対決するのは変ですよね。
ファントムシータにとってはTHE FIRST TAKE初出演で、Adoの「ウタカタララバイ」「レディメイド」と自身の「キミと××××したいだけ」「おともだち」を織り交ぜたメドレーを一発撮りで披露。
一方のAdoは「うっせぇわ」を届け、元日に公開というタイミングも含めて象徴的な映像になったと思います。
「アイ・アイ・ア」でのコーラス参加(2026年3月16日)
😮 これが発表されたとき、個人的に一番テンションが上がった出来事です。
2026年3月16日、Adoがきくおさん作の新曲「アイ・アイ・ア」をTHE FIRST TAKE(第647回)で披露したんですがこのときファントムシータがコーラスとして参加。
「プロデューサーの新曲にアイドルがコーラスで入る」って、これはもうプロデューサーとアイドルの関係を超えた、もっと深い共同制作の感覚ですよね。
カオティックなサウンドにAdoの変幻自在なボーカルとファントムシータのコーラスが絡み合う構成は、これまでにない形の共演でした。
2025年のドームツアー「よだか」でも披露していた楽曲だったみたいで、ツアーを経て音源化・映像化されたという流れのようです。
きくおとの繋がり
Adoさんに楽曲提供させていただきました!お楽しみください〜〜〜〜 https://t.co/PjCMBvZ2ge
— きくお (@kikuo_sound) March 20, 2026
Adoの音楽ルーツがそのままグループの方向性に
実はファントムシータの楽曲にはきくおさんが一貫して関わっていて、デビュー曲の「キミと××××したいだけ」も「アイ・アイ・ア」もきくお作。
Adoのルーツがボカロ文化にある点を考えるとグループの楽曲にボカロ系クリエイターを起用しているのはとても自然な流れで、ファントムシータの方向性がAdoの音楽的な嗜好とほぼ直結している証拠でもある。
世界観ごと自分の美学を乗せて作っているグループという印象がより強くなりますよね。
体制変更後も続く関係性
メンバー脱退と現在の4人体制
2025年5月、健康上の理由でメンバーの灯翠(ひすい)が脱退。現在は4人体制で活動しています。
ファンにとって辛いニュースだったと思いますがこの体制変更後もAdoとの共演やプロデュース関係は変わらず続いていて、ドームツアーへの帯同も4人になってからの出来事です。
Adoのグループへの関わり方が「条件付き」じゃないことはここでも伝わってくる気がします。
ファン視点での課題感
独自のアイデンティティをどう確立するか
客観的に見るとAdoのファンの間では「ファントムシータの話題がAdoに集中してしまう」「メンバーをミニAdoとして捉えているだけ」という声もあるみたいで。
これはある意味、避けにくい問題だとも思っていて。
プロデューサーが著名であるほどグループ単体の評価や認知が埋もれやすくなるのは、どんなケースでも起きうることですよね。
ファントムシータが独自のアイデンティティをどこまで確立できるか。
ワールドツアーを経てメジャーデビューまで辿り着いた今、その土台は間違いなくあると思うのであとは時間の問題なのかもしれないです。まあ、個人的な意見ですけど。
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